犬と猫…ときどき、君
「城戸は何の遊具が一番好きー?」
「芹沢」
「私はねー、ジャングルジムー」
「おい」
「だって、一番上に登ってボーっとするの、何か気持ちよくない?」
「……また幼児返りかよ」
「――っ」
観念したように笑った城戸の言葉に、心がつい反応してしまう。
「んで? 登るの?」
「……」
「芹沢?」
「……登る」
「あっそ」
私を覗き込む、その真っ黒で綺麗な瞳に、今だけでいいから私を映して欲しいなんて――やっぱり相当酔っぱらっている。
「俺も、一番好き。ジャングルジム」
ヨジヨジと、いい大人が二人でよじ登った、ジャングルジムの頂上。
空に一番近いその場所で、隣に座る城戸がそんな言葉を落とした。
――きっと、理由は私と同じ。
「たったこれだけの高さなのに、空が近くなった気がするよなぁ」
そう。
空が、近くなるから。
ぷらぷらと足を揺らしながら天を仰げば、そこにはさっきよりもハッキリ見える天の川。
「でもやっぱ、向こうの方がよく見えるな」
「……うん」
だんだん涼しくなり始めた空気に、少しずつ酔いが醒めていく。
「なぁ……」
「んー?」
「連絡すんの?」
「へ?」
突然の質問の意味が理解出来なくて、隣に視線を送れば、目があった瞬間、城戸は少し困ったように笑って。
「今野に」
ポツリと、そんな言葉を落とした。