犬と猫…ときどき、君
今野先生と食事をした次の日、診療が終わった病院の検査室には、マコのウキウキとした声が響いていた。
「へぇー。いいじゃん、いいじゃん!」
「……」
「ねぇ、顔は!? 顔はどんな感じ?」
「どんなって……」
「韓流スターでいったら、どんな感じ!?」
「何で韓流なの?」
私的には普通の恰好だったのに、昨日今野先生と出掛ける為に選んだ服が、マコ曰く“女度の高い服だった”らしく。
怪しいと思ったマコは、昨日の夜から一人で悶々としていたらしい。
「昔の彼氏共とは違って、仕事にも理解あるし! いいんじゃない?」
「……」
「これは冗談じゃなく、本心からね。胡桃、もうすぐ誕生日だし」
「それ、関係ある?」
「去年みたいに、女だらけの誕生日パーティーやるよりは、男と二人の方がいいに決まってるもん」
「あっそ」
いつものように、返事をしたつもりだった。
それなのに、マコは小さくその顔を顰めて。
「……その反応、やめたら?」
そう言った。
「え?」
「ホント似てる」
私の言葉に、さっきまでのふざけた笑いを引っ込めて、整理中のプレパラートに視線を落としたマコ。
「城戸と少し距離を置くのは、いいと思う」
飛び飛びのその話を、私は全然理解できない。
「ホントはこんな事言いたくなかったけど」
「……」
「あんた達、離れてもやっぱり似てるんだもん」
「“あんた達”って?」
「胡桃と城戸」
カチャカチャと音を立てる薄いガラス。
落としていた視線を上げて、マコの目を真っ直ぐ見ようとしたのに……。
それをスッと、逸らされてしまった。
「それに、見ててハラハラする」
「……どうして?」
私の問いかけに、何故か一瞬言葉に詰まったマコは、ゆっくりと息を吐き出す。