犬と猫…ときどき、君
“9月10日、予定入ってなかったら、一緒にメシ食いに行こ。”
そんなメールが届いたのは、マコと誕生日の話をした数日後の事だった。
もちろん差出人は今野先生。
「うーん……」
どうなんだろう、これ。
まだ二週間近く先の私の誕生日を、ピンポイントで指名してくるこれは……どういう事だろう?
ただの偶然?
温かい光が差し込むお昼休みの医局の私の机の上で、低いバイブ音を響かせた携帯。
それを眺めながら、思わず眉間に皺を寄せた。
「すげぇ、シワ。戻んなくなるぞ」
「……シャレにならない年齢になってきてるんだから、やめて」
目の前で今日は珍しくカップ焼きそばを啜る城戸が、例の如く“くくくっ”と、楽しそうに笑う。
その城戸を、一瞬睨みつける。
だけど、私の睨みに怯むはずもない城戸は「あー、そうだ」と、まるで何事もなかったかのように話しを変えて、
「今野から、誕生日に誘われた?」
そんな驚くべき一言を口にしたんだ。
「……」
「やっぱり誘われたんだ」
「まだ、何も言ってないけど」
「顔見りゃわかるよ。お前、ホント分かりやすいし」
分かりやすい?
最近は、そんな事ないはず。
少なくとも、城戸に抱きかけていた想いはバレていないワケだし。
「何でそれ知ってるの?」
「誕生日、俺が教えたから」
「は? 何で教えたの?」
意味が分からなくて、また眉を寄せた私を少し笑った城戸は、「昨日、今野に聞かれた」と、食べかけだった焼きそばをまた啜り出した。
なるほどね。
それで、このメール。
でもなぁ……。
もちろん迷惑とかじゃない。
だけど、もしも誕生日をお祝いしてくれるつもりだとしたら、それはちょっと申し訳ない気がする。
だって私は、今野先生の彼女じゃないし……。