犬と猫…ときどき、君
本当に悔しかった。
城戸の頑張りを、全部全部壊されたみたいで、悔しかった。
毎日毎日、私は城戸を近くで見ているから。
朝早くから病院に来て、ストレスでいっぱいの入院犬を、出来るだけ長くランに出してあげている事も、
家に帰りたくて鳴き続けているイヌやネコの不安を取りのぞこうって、お昼休みにコッソリたくさん話しかけてあげている事も、
消えそうな命を絶対に助けるって、誰よりも強く思っている事も、
助けられなかった命を前に、自分の無力さを嫌という程感じて、本当に本当に悔しがっている事だって……。
私は全部全部、知ってるから。
「お願いだから、分かってよ……っ」
気付いた時には、私の頬を、涙がボロボロと伝い落ちていた。
「もっと、大事にしてあげて」
涙を零しながら……目の前で、驚いたように目を見開く彼女に、ポツリとそんな言葉を零してしまっていた。
私が言う事じゃない。
私にそんな事を言う権利なんてない。
分かっているけど、言わずにはいられなかった。
頬の涙をグッと拭って、心を落ち着けようと大きく息を吐き出す。
その私の背後から、
「何してんの?」
聞き慣れない低い声が聞こえた。
「ハルキさん!!」
「……っ」
私の横をすり抜け、後ろに立つその人物に駆け寄った彼女から香る、甘い香り。
「お前、何してんの?」
お腹に響く低い声のまま、私にそう言葉をかけたのは……城戸。
「……」
私は手をギュッと握りしめたまま、振り返る事も出来ずに下を向く。
だって、私――。