犬と猫…ときどき、君
「ごめんねー! まさか、消しゴム半分に割ってくれるとは思わなくて!」
授業が終わった瞬間、クルリと私に向き直り、手を合わせながら開口一番そう口にした隣の席の女の子。
「だって、そうしないと間違える度に困るでしょ?」
「あー、確かに。今日買って返すからー!」
「別にいいよ。半分でも使えるし」
相変わらずテンションの高い彼女にそう告げて、次の教室に向かう為に机の荷物を片づけを始めた私だったけれど……。
「芹沢胡桃チャンでしょ?」
彼女が突然私の名前を口にしたから、驚いて顔を上げた。
「私、畜産学部の椎名眞子! “マコ”って呼んでね。で、あんたは“胡桃”ね」
「は?」
「よし! おーとーもーだーちぃ。はい、握手ー」
「えっ!?」
呆気に取られる私をオール無視して、両手をがっちり握った彼女は謎な言葉を口にして、ニヤリと笑う。
「入学式の時から、ずっと目ぇ付けてたんだよねー」
「目ぇ……付けてた?」
何それ。
怖いんだけど。
アンタ、どこのヤンキーですか?
一瞬で眉間に皺を寄せた私を見て、楽しそうに笑った“マコ”は本当に表情が豊かで、今度は嬉しそうにフワリと笑った。
「やっぱりねー」
「え? な、なに? よくわかんないんだけど」
「胡桃、私と同じ匂いがしたんだー」
に、匂い……とは?
「“周りに誤解されやすいタイプ”でしょ?」
「……」
その彼女の言葉に胸が大きな音を立てたのは「だから誤解されんだろ」という、あの日の城戸春希の言葉を思い出したから。