犬と猫…ときどき、君
「あれ? 固まった。おーい!」
人懐っこそうな笑顔を向けて、目の前でヒラヒラと手を振るマコから一瞬視線を逸らし、息を一つ吐き出す。
「……同じタイプには見えないんだけど?」
だってそうでしょう?
私はこんなに可愛らしく、初対面の人に懐いたり出来ないもん。
顔を上げて困ったように笑った私を、大きく見開いた目で見つめたマコは、
「逆だけど、きっと同じタイプだよ」
ちょっとだけ目を細めて、今度は少し淋しそうな笑顔を浮かべた。
「……」
あー、そうか。
何となく言いたい事が理解出来たかもしれない。
深く狭くしか人と付き合えない私。
城戸春希は「それでいい」って言ったけど……。
やっぱりそれはまだ私にとってはコンプレックスで、もっと周りの人に溶け込みたいのに、そう出来ない自分がいる。
さっきからマコに一言声をかけ、さっさと教室を移動していく“友達”を見ていると、彼女は“広く浅く”――そんな付き合いの友達が多いのだと思った。
一見、正反対に見える私達。
だけど、一人じゃないのに何故か孤独を感じてしまったり、本音を話せる友人が少なかったり、そんなところが似ているのかもしれない。
――ホントに、変な子。
つい、小さな笑いが洩れてしまう。
「マコー」
自分でそうするようにと言ったくせに、私の呼びかけに、マコは驚いたように目を見開いた。
「今日、お昼一緒食べよ」
「あはっ! オッケー! じゃー、二限目終わったらホールで待てるわー」
これまでで一番嬉しそうに笑ったマコは、私の携帯番号を聞くと、そのままパタパタと次の教室に走って行った。
その後ろ姿を見ながら、私は大学に入って、初めて心からホッとした気がしていた。
不思議な感覚に戸惑いながらも、ちょっとだけ緩んでしまった頬。
素直に嬉しいかもしれない。
まだ十八歳だけれど、この歳になると、こんな風に“友達になろう”的な事を面と向かって言われる事って、なかなかないもん。
だから、すごくホッとした。
お互いがお互いを“友達”だと思っているのを知る事って、私にとっては意外と大事なんだ。