犬と猫…ときどき、君
「マコ……助けて」
一人冷たい床に座り込んで、耳に押し当てた携帯が繋がった瞬間、口をついて出たのはそんな言葉だった。
「胡桃!? どうしたの!?」
「もう嫌だよ!!」
「……」
「春希、意味分かんないし!!』
「胡桃……」
感情を抑えきれなくなった私の名前を、心配そうにもう一度呼んだマコは、大丈夫だから。取り敢えず、深呼吸して」と、優しく声をかけてくれる。
そして、私の呼吸が落ち着いたのを確認すると、タクシーを拾って、そのまま自分の部屋に来るように告げて電話を切ったんだ。
ボーっとする頭のまま、何とか病院の施錠を終えると、私はマコの言いつけ通り、病院の前の大通りでタクシーを拾った。
「取り敢えず、駅の方にお願いします」
運転手に行き先を告げ、身を沈めたタクシーのシート。
手には、城戸に貰ったストラップを握ったまま、窓に頭を擡げた私は静かに瞳を閉じた。