犬と猫…ときどき、君
授業や実験、時々試験。
慌ただしい毎日をバタバタと過ごし――気が付けば、大学に入って三年目の春を迎えていた。
入学したての頃は、先輩達の横の繋がりの強さに驚いていたけれど、丸二年ここで過ごすとその理由が簡単にわかってしまう。
相変わらず秘境のような土地で暮らす私達。
大学の近くのアパートやマンションは学生だらけだし、スーパーだってコンビニだって、行くと必ず顔見知りの誰かがそこにいる。
遠出する時には、誰かの車に相乗りをして出掛けるそれは、さながら遠征のよう。
みんながみんな、そんな生活を送っているから、学生同士の絆というものが自ずと強くなるらしい。
やっぱり大学生ともなると、みんな人間的に大人になるのか、昔より煩わしい人間関係も減ったし、仲良くなった仲間たちと、それなりに楽しい毎日を過ごすようになっていた。
だけど、一個だけ。
私にとって、とても面倒な事がある……。
「お願い!! アキが熱出て来られなくなっちゃって!!」
「ムリ。絶対ムリ。てゆーか、イヤ」
「わかってる!! わかってるけど……そこを何とかっ!! このとーり!!」
その日も私は、目の前で手を合わせ、これでもかという程のお願いポーズを決めてみせるマコに唇を尖らせていた。
「だって、もう何回目?」
「三回目……くらい?」
「五回目ですっ!! 毎回毎回言ってるじゃん。私、合コン嫌いです」
――面倒なコト。
それは、三年生になっても彼氏彼女が出来ない集団が、慌てて相手を探したがって、頻繁に開かれる“飲み会”。
まぁ、簡単に言ってしまえば合コンってやつだ。
「今回は絶対行きません」
この前だって「これで最後にするから!!」なんて言っていたくせに。
男の子ともそれなりに仲が良いマコは、いつも幹事を任されて、こうして何かある度に私がとばっちりをくらう。
だから今回こそは、突っぱねようと思ったのに。
「ふーん、あっそ。それは残念だなぁ」
「……なによ」
マコの思わせ振りな言葉と視線に、思わずたじろぐ。
「今回はねぇ、珍しいお相手だよ?」
「は? どうせうちの大学の子達でしょ?」
「そうだけどー。来た方がいいと思うなぁ……」
いつもだったらもっと下手に出るマコの、らしからぬ口調に、思わず寄ってしまう眉間のシワ。
「ヤロー共の幹事、篠崎だよ」
その一言にピクリと反応してしまった私を、マコは見逃さなかった。
「さてさて“篠崎軍団”と言えば?」
“篠崎軍団”というのは、騒がしくて目立つ篠崎君を中心とした、うちの学年の集団。
その中の一人に含まれているのが……城戸春希。
でも城戸春希って、一回も“篠崎軍団”の合コンに来た事がないって聞いたし。