犬と猫…ときどき、君


「え? ちょ、ちょっと、何?」

「何って、メシ。食うだろ?」

「食べるけど……」


混乱する私に「取りあえず行こ」と声をかけて歩き出した城戸は、隣に並んだ、未だに納得のいっていない私を見下ろし少し笑う。


「今野がいいトコ知ってるって」

だからって、私の意見も聞かないで決めるのはどうかと思う。

この前の事を、城戸だって忘れていないはずなのに……。


私の一歩前を歩く城戸は、その気持ちに気付いたのか、

「お前は何も気にすんな」

小さく笑って、振り返る事なくそんな言葉を口にするから、私は何も言えなくなってしまった。


ここで何か言ったら“あの夜”の事をまた蒸し返すことになって……。

それってこれから沖縄で過ごす数日間の事を考えると、絶対に得策とは思えない。

だから私は、「わかった」とだけ口にして、城戸の少し後ろを、その広い背中を見つめながら無言でついて行く事にした。


< 400 / 651 >

この作品をシェア

pagetop