犬と猫…ときどき、君
「城戸! 芹沢先生!」
「おー、お疲れ」
城戸の後ろを歩くこと、十数分。
今野先生が私達を待っていたのは、大通りから少し外れた所にある、地元の人しか知らないような小さなお店だった。
真っ直ぐ今野先生の元に向かう城戸は、本当にいつも通りで、それに対する今野先生もいつも通り。
だけど私はやっぱり、あの瞬間、城戸の腕の中で聞いた今野先生の声を忘れる事が出来なくて……。
「何してんの? 座ったら?」
「あ、うん」
私に城戸の隣の席に座るよう促した今野先生は、少し困ったように笑った。
今野先生にちゃんと誕生日のお礼がしたいけど、この状態では絶対に無理だし。
一人悩んでいる私の目の前では、人の気なんか知らないで、男二人が何やら楽しそうに、珍しいお酒のメニューを見ながら、あーでもない、こーでもないと……。
男の子って、どうしてこうなんだろう?
皆が皆そうじゃないんだろうけど、女の子みたいにドロドロしていなくて……。
羨ましいけど、対応に少し困る。
だってきっと、あの日の事を城戸と今野先生は何かしらの形で話をしているから、こんなにスッキリした状態なんだろうと思うし。
“何を話たの?”なんて、聞けるはずのない私は、すっかり置いてきぼりだ。
私にとってはすごく微妙な状態が、数十分続いた頃。
「トイレ行ってくる」
そんな言葉を口にして立ち上がったのは、隣に座っていた城戸だった。
城戸と今野先生のやり取りを眺めながら、私も時々口を挟んだりして、だいぶ和みはしたけど、それでもまだ気まずさは取り切れていない。