犬と猫…ときどき、君
結局、なかなか集中できない頭のままセミナーを終えて、城戸と篠崎君と三人で、大学の同期飲みの会場に向かう。
「芹沢、K大のおっさんが言ってたこと理解できた?」
「いや、あんまり。ってゆーか、あのデータ、検体数が少なすぎると思うんだけど」
「ねー!! 俺もそれ思った!! あれ、データとして出すってどうなの!?」
隣を歩く篠崎君は、しばらく会わなくても、やっぱり篠崎君で……。
相変わらずよくしゃべる、人懐っこい人。
「あのおっさん、結構前から、怪しいってウワサあるもんな」
「だよな!! だよな!!」
「つーか、篠崎さぁー」
「おう! どうした!?」
「暑苦しい」
「はぁっ!? 何それ!! 意味分かんないんですけど!!」
ちょっとうるさいくらいだけど、二人の時よりも上手く息が出来るのは、きっとこの状況にホッとしているからだと思う。
少し胸を撫で下ろしながら、スピードを落として二人の背中を眺めていた私の首に、元気な声と共に、力強い腕がスルリと巻きつけられた。
「胡桃ーっ!!」
「うわっ!!」
「久しぶりーん!!」
「サキ! 相変わらず元気そうだねー! ってゆーか、首苦しいかも」
「あははっ! ごめんごめん。だって、何か嬉しくて」
驚いて後ろを振り返った私に、これまた人懐っこい笑顔を向けるのは、どこから走って来たのか少し息を切らせたサキだった。
「おー! サキ!! 久しぶりー!」
「……あれ? どちら様でしたっけ?」
「きゃー、ムカつくぅー」
「うそうそ! 久しぶりだね、篠崎ー! と、城戸も!」
変わらないノリで篠崎君とじゃれた後、昔と同じように城戸に笑顔を向ける。
きっと私と城戸の為を思って、サキは私のお願いを聞いてくれたんだろう。
「……おー、相変わらず元気な奴だな」
そんなサキに、一瞬驚いたように瞳を大きくした城戸は、フッと笑って、そんな言葉を口にした。