犬と猫…ときどき、君
ホッとして、城戸に視線を向ければ、困ったように小さく溜め息を零す。
城戸は本当に優しくて、私のコンプレックスとか自分の感情を抑え込んでしまう所とか、そういうところを理解して、私が傷つきそうになると、こうして手を差し伸べる。
昔からそう。
そしていつも、何事もなかったかのように、その空気を換えてくれるんだ。
――だけど、どっちがよかったんだろう。
「あっ! そういえばさ、しーチャン元気?」
若生君のその言葉に、城戸の表情が一瞬強張るのがわかった。
「……元気なんじゃねぇの?」
「何だよそれー! 相変わらず素っ気ねぇなぁ。つーかさ、まだ付き合ってんだろー?」
若生君のからみの矛先は、城戸に向いてしまって……。
「あぁ。付き合ってるけど?」
「だよなぁー。いいなー、しーチャン!!」
その話題は、私の胸を少しだけしめつける。
「セミナー、一緒に来てんの?」
「いや。別だけど」
「えぇー。一緒に来りゃいいじゃーん! てかさ、付き合ってどんくらい? 結構長くね?」
「……知らね」
「何だよお前ー。ホント冷てぇよなー。芹沢もそう思わねぇー?」
「――え?」
突然の若生君の声に視線を上げれば、正面には、私の瞳を真っ直ぐ見つめる城戸の姿があった。
どうして、そんな事を聞くんだろう。
「えっと……」
息を呑み、少し乾いた唇を開けば、そこから零れる声は、小さく震えていて、さっきまで城戸に向けていた視線が、テーブルの上に落ちる。
――何て、答えればいい?
自分でも驚くくらいに動揺しいてて、頭は真っ白。
それに、喉がカラカラになっていく。