犬と猫…ときどき、君


そっと溜め息を零して、今野先生に視線を戻すと、その後ろに、篠崎君に今野先生の登場を知らされて来たのであろう城戸が立っていた。


「お前のツレ、うちの肉食系に食われかけてんぞ」

「あははっ! 何だよそれ!!」

「野田のがっつき、ハンパねーんだって。マジでお持ち帰りされるぞ」

「まぁそれはそれで、部屋が広くなって助かるけどな」

「つーか、俺様のテリトリーに入っておいて、挨拶もなしかよ」

「何だよ“俺様のテリトリー”って。どこのヤンキーだよ」


楽しそうに笑う二人を眺めていると、この三人の関係について色々考え込んでいる自分が、少しだけ間抜けに思えてくるのは何故だろう……。


「つーかお前、野田止めろよ。責任者だろ?」

「えー。いいじゃん、その肉食系のがっつきで幸せになれるなら。むしろあの捕食っぷりが羨ましい」


さりげなく私に振られた会話は、絶対に城戸の策略。


そんなに気を遣わなくていいのに……。


だけど、そうしてくれることで、私は会話に入りやすくなったことは確かで。


「じゃーお前も鴨田食ってこいよ」

「なんでよ。大体にして、私は草食系だから」

「え? 芹沢先生って、肉食系じゃないの?」

「は? 今野先生までなに言ってるの? どう見ても草食系でしょ」

「おいおい、お前ウソ吐くなよ」

「城戸はうるさい。黙っててー」

「おい! 人の花火の火ぃ取んなよ!!」


やっと蟠《わだかま》りも取れて、これでまた元のようになれるかもって、そう思った。


――思ったのに。

どうしてそういう時に限って、嫌な事って起るんだろう?

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