犬と猫…ときどき、君
「ねぇ、どうして?」
あのサイトが、今どうなったのかなんて分らないし、それを知りたいとも思わない。
だけど、あれで傷付いたのは、私だけじゃなくて……。
マコもサキも、聡君も。
それに城戸だって。
みんな、あんなに傷付いたのに……。
同じ言葉を繰り返した私に、仲野君は何も言わないまま、まるで何か迷いがあるようにその瞳を揺らす。
「どうして今更、そんなこと言うの?」
あのまま何も言わないでいてくれたら、こうしてあのサイトの事を思い出すことも、仲野君にこんな嫌な感情を抱いてしまう事だってなかった。
怒りにも似た感情が芽生え始めた私の前で、仲野君は苦しそうに顔を歪める。
「きっと今言わなかったら、後悔するから」
「……」
「今言わないと、全部が手遅れになる気がしたから」
そう言って下を向いた仲野君の、握りしめた拳が小さく震えていた。
「でも、理由はもう少しだけ待ってもらえませんか……?」
なに、それ。
「……っ」
暑い。
気分が悪い。
頭の中?
それとも目の前?
とにかくどこかが、平衡感覚を失ったようにグラグラと揺れ始めて……。
「芹沢さん?」
「ごめん」
「え?」
ダメだよ。
こんな顔してたら、心配するじゃん。
「ちょっと、気分悪くて。……暑いからかな?」
さっきから感じる、城戸の視線。
きっとこんなにも動揺する私を見たら、優しい城戸は、また心配をしてしまう。
「ちょっと涼んでくるね」
「芹沢さん……っ!!」
口元を押さえた私は、慌てる仲野君を振り切って、その場から駆け出した。