犬と猫…ときどき、君
――気持ち悪い。
でも、あそには居たくないし、居られない。
こうする以外、どうすればいいのかなんて分からなかった。
とにかく走って、走って、走って。
「はぁ……っ」
少し離れた、薄暗いコインパーキングに駆け込んだ私は、その場にズルズルとしゃがみ込む。
「――……っく」
きっとあのままあそこにいたら、私はバカみたいにみんなの前で、ボロボロと泣いていた。
「も……やだよ」
それを嫌だと思う私は、こうして一人ぼっちで涙を流すしかない。
それを淋しいと思うくせに、春希という一番の理解者を失ったあの日から……私は、上手な泣き方を忘れてしまったんだ。
――ねぇ、春希。
ダメだね、私。
瞳を閉じれば、春希の腕に寄り添う松元さんの姿が浮かぶ。
それにこんなに心が痛むのは、どうしてだろう?
春希は元彼で、友達で……。
「……っ」
あぁ、そっか。
彼は私が、唯一甘えられる存在だからか。
愛とか恋とか、そんなのじゃなくて、今まで出逢った誰よりも、私を理解してくれる存在だったから。
醜い私は、それを誰かに取られてしまうのが嫌で、悔しくて、だからこんなに、胸が痛いんだ。
“オモチャを取られたくない子供”。
それってむしろ、私のことなのかもしれない。