犬と猫…ときどき、君
何が書かれているのかなんて、全く見当もつかなかった。
それなのに、一人で動揺して、開く事を躊躇して……。
だからかな?
それを開いた瞬間、一気に気が抜けてしまった。
【篠崎と飲んでから戻るから】
たったそれだけの、メール。
「……」
バカみたい。
湧き上がったのは、安堵の気持ちが半分と、残りは、淋しいと思う、ショックにも似た気持ち。
やっぱり私は、現金な女だ。
当たり前だけど、城戸にとって、私との事は過去の事で……。
そもそも、旅行の前に言われたのに。
“距離を置く”って。
だから、城戸のメールにショックを受けるなんて、間違えてる。
頭では、分かってるんだけどな……。
「本当に、大丈夫か?」
何度かそう尋ねてくれた今野先生に、「平気だよー」と、バレバレかもしれない作り笑いを浮かべた私は、そのまま先生の言葉に甘えて、ホテルのエントランスまで送ってもらった。
「じゃー、また明日」
「うん。ホントにごめんね。あと、ありがとう」
その瞳を見上げながらお礼の言葉を口にした私を小さく笑ったあと、
「何かあったら、いつでも連絡して」
今野先生はそう言って、手をヒラヒラさせながら自分のホテルに帰っていった。