犬と猫…ときどき、君
部屋に戻った私は、すぐにシャワーを浴びる為に、バスルームに向かった。
「ひどい顔」
鏡に映る自分の顔を見ながら、ポツリと呟く。
目も鼻も真っ赤だし。
何かを振り払うように頭を振って、熱いシャワーを頭からかぶる。
くもった鏡をボンヤリと見つめていると、色んな事が頭に浮かんでしまって……。
“大学の時の、裏サイト”
“あれを作って、管理してたの……俺なんです”
どうして?
私、仲野君に何かしたかな?
理由を聞くことが出来なかった、仲野君のその言葉を思い出して、また胸にひどい痛みが走る。
それに……。
“全部が手遅れになる気がする”
そう言っていた。
“手遅れ”って、何が?
だって、あれはもう昔の事で、終わった事でしょう?
裏を返せば“まだ続きがある”とも捉えられるその言葉に、私は小さく身震いをした。
もしもそうだとしたら、一体、何が起きるのか。
「……」
怖い。
大学の時のあの一件で、それまで以上に人が怖いと思うようになった。
だけど、時間が経つにつれてその感情はどんどん薄れていって、いつの間にか忘れかけていた。
――それなのに。
「また人間不信になりそ……」
小さく呟いたはずのその言葉が、今のどんよりとした気分のせいなのか、自棄に大きく響いた気がした。