犬と猫…ときどき、君

シャワーを終え、溜め息を吐きながら部屋に戻った私は、ボーっとした頭のまま窓辺に立って、外を眺める。


暗くても、昨日はあんなに綺麗だと思った海が、今は怖く感じるのは何でだろう?


昨日、この先のベランダにあったのは、城戸の姿。

ゆらゆらと揺れる煙草の煙が、紺色の空に溶けていく様子を、私は少し離れた所から眺めていたんだ。


頭の中を仲野君のことから切り替えたくて、何度も溜め息交じりに瞳を閉じて……。

だけどその度に浮かぶのは、城戸と松元さんの姿で、また溜め息が出る。


私にはマコがいて、聡君がいて。

“辛くなったら頼ればいい”――そう言ってくれた、今野先生だっている。


それなのに、どうしてかな?


城戸の一番は私じゃないって、分りきっていたそれを目の当たりにして、再認識して。

それだけなのに、胸にポッカリと開いた、大きな穴。


「……」

きっとこれは、喪失感。

たった一人。

城戸が傍にいなくなっただけなのに、おかしいよね……私。


冷蔵庫から取り出した、冷たいお茶を口にして、それを火照った頬に押し当てる。


「気持ちいいー……」

そのままベットに横になり瞳を閉じると、よっぽど疲れていたのか、強い眠気がどんどん襲ってきて……。

いつの間にか私は、深い眠りについていた。

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