犬と猫…ときどき、君
「――……っ」
ギュッと私の手を握ったのは、城戸の熱を持った熱い手の平。
私の手を掴んだまま、それを自分の口元に運ぶと、そこにそっと……キスをした。
――ドクン。
大きく跳ねた心臓と、見開いたままの瞳。
目の前で、伏せていた瞳をゆっくり開いた城戸と視線がぶつかる。
お酒のせいなのか、いつもよりも水気を多く含んでキラキラと光る、その真っ黒な瞳に息を呑んで、目が離せなかった。
私の視界の端には、ゆっくりと伸ばされる城戸の綺麗な指先が映り、魔法なのか、呪いなのか。
よく分からないけれど、そんなものにかかったみたいに、私は身動き一つ出来ずにいた。
――だけど、次の瞬間。
「んっ……!!」
驚いて見開いた目の前には、城戸の伏せられた瞳。
後頭部に回された城戸の手が、私を引き寄せて、気が付いた時には、唇が重なっていた。
少し乱暴な手の動きとは裏腹な、昔と変わらない優しいそのキスに、血液が一気に湧き上がって、体がカッと熱くなる。
それだけでも、頭の中は十分パニックだった。
それなのに……。
ゆっくりと離された、城戸の唇。
「胡桃」
城戸が、息を飲む私の名前を静かに呼んで、視線が絡まるのが早かったのか、そうなるのが早かったのか……。
その唇が、もう一度私の唇を塞ぎ、返事を返そうと、わずかに開いたその隙間から、柔らかな舌を滑り込ませる。
「ん……っ!!」
息が苦しくて、とにかくそこから離れたくて。
その胸を押し返そうとする私の腕を片手で制した城戸は、何度も何度も角度を変えながら、深く私の口内を犯していく。
もう嫌だ。
だってこんなの、苦しすぎる。
「――……っ」
胸が痛くて、泣きそうで、苦しすぎる。
だから、もうやめて。
――もうこれ以上、私の心に入り込まないで。