犬と猫…ときどき、君
「……っ!!」
「最っ低!!」
思わず噛んだ、城戸の舌先。
目の前には、小さく顔を顰めながら、唇を離した城戸の顔があって……。
「胡桃!!」
再び伸ばされた城戸のその手が私に触れるよりも早く、部屋に乾いた音が響いた。
部屋を飛び出す瞬間、私の滲んだ視界には、驚いたように目を見開きながら、呆然と私が叩いた頬を押さえる城戸の姿が映っていた。
「……っ」
どうしてこんな事になったんだろう?
先に進まないといけないってわかっているのに、進もうとする度に、こうして元いた場所に引き戻される。
「最低だよ……っ」
気付きたくなかった。
気付いたらもうダメになるって分かっていたから。
「もう無理……」
胸が痛くて、苦しくて。
これが恋じゃないのなら、一体なにを“恋”って呼ぶの?