犬と猫…ときどき、君

明日になって、向こうに戻って、いつも通りの暮らしがまた始まる。

だけどきっと、もう今まで通りの城戸と私じゃいられないから……。

そう思うと、いてもたってもいられなかった。


こんな事をして、本当にバカみたいだって自分でも思うし、意味のない事。

でも、それでもいいからって……そう思った。


祖父江ちゃんに教えてもらったお店でご飯を食べて、その帰り道。

今しか、チャンスはない。


隣りを歩く城戸をチラリとみると、ぼんやりと空を見上げながら歩いていて、“あの星を一緒に見られたら、何か変わるかな?”なんて、あり得ない事まで頭に浮かぶ。


ゴクリと息を飲み、明るい光を灯したコンビニの前でピタッと立ち止まった。

そんな私にすぐに気付いた城戸が、ゆっくりと振り返る。


「ごめん、先帰ってて! ちょっと買いたい物あって」

城戸。

「……別に待ってるけど」

一緒に見に行きたいな。


やっぱり私、城戸と一緒に見たいよ。


「……っ」

口をついて出そうになる言葉を、ゆっくりとした呼吸で飲み込む。


ホント笑っちゃう。

私だって、人のこと言えないよ。


「女の子には色々あるのー」

私は城戸と別れてから、一体どれだけの嘘を、重ねてきたんだろう……?


怪訝そうな顔をしながらも、小さく頷いて歩いて行く城戸の背中を見つめる。


“ウソを吐かない人”――そんなの、ただの理想論だったんだよね。

だって、本当の気持ちを全部伝えてしまったら……。


「ホントは、一緒に見たいんだけどな……」

きっと城戸は、もう今までみたいに私の傍にはいてくれない。


「バカみたい」

どうしたらいいんだろう?

この気持ちを綺麗さっぱり消し去るには、一体どうしたらいいんだろう?

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