犬と猫…ときどき、君
「今野先生も、どんだけドMなのよ……。もー、ホント信じらんない」
目の前のマコが、こんな風に頭を抱えるのは当然のこと。
だけどね……。
「でも、きっと今野先生とだったら、上手くいくと思うんだ」
「……」
「春希と付き合ってた時って、毎日ワクワクして楽しくて。なんか、子供に戻ったような気分だったんだよね」
「……うん」
「でも、今野先生とは……何ていうのかな? 一緒にいると、ゆったり出来て、穏やかな気持ちになる」
それはホントで、だから付き合おうって思えたんだ。
「私も、ちょっと落ち着きたくなったのかも」
そう言って笑った私に、マコはまだ何か言いたげに口を開く。
だけど、何も言わないまま、何かを自分に言い聞かせるように何度か頷いて、小さく「わかった」とだけ言うと、それっきりその話に触れてくることはなかった。
やっぱりマコは、文句を言いながらも、心のどこかで願っていたんだと思う。
私と春希が、昔のようにまた付き合う日が来ることを……。
「ごめんね、マコ」
「はぁ? 何がー? ってゆーかさ、胡桃なんかご飯作って帰ってよ」
「えー、何でよ」
「いいじゃん!! 私、今日はお料理したくない気分」
「何それ。いつもじゃん」
お互いにお互いを傷つけて、マコを傷つけて、今野先生を傷つけて。
もしかしたら、もっとたくさんの人を傷つけてしまったかもしれない、私と春希のこの恋は、
「マコー、今日泊めてー」
「はぁ!? 嫌だよー。今日、透来るし」
「えぇ、ケチー」
今は無理でも、いつか笑って話せる“過去の恋”になるんだろうか――……?