犬と猫…ときどき、君
次の日の朝、放り投げられたままになっていた携帯がピカピカと光っているのに気付いて、それを開いて心底ゲンナリした。
【どうせ部屋には上がらないんですよね?】
そんな言葉と共にそこに届いていたのは、どう見てもマンションではない住所が書かれたメール。
確かにどこでもいいんだけどさ。
でも何かこの住所、見覚えがあるんだよな。
その場で少し考え込んで、だけど結局それがどこなのか分らなかった俺は、手早く準備をすると駐車場に急いだ。
玄関のドアを開けると、外の空気はすっかり冷たくなっていて、それを大きく吸い込んだあと、停めてあった車に乗り込む。
「えーっと……」
もう開きたくもないそのメールを仕方なく開いて、書いてある住所をカーナビに打ち込んでいく。
「……」
アイツ、一体なにを企んでるんだ?
ナビに表示されたそこは、やっぱりマンションではなく小さな公園。
「行って、怖いにーちゃんがワンサカいたらどうしようかなぁ」
うーん。
まぁ、そうなったら大人しく殴られて、慰謝料を大量にふんだくればいいか。
「んー……」
だけど、やっぱりどこかで見覚えのある住所なんだよな。
でも、何だかもう、考えるのも面倒になって、
「いいや、面倒くせー」
そんな言葉を吐き捨てた俺は、携帯を閉じて、エンジンがだいぶ温まった車のギアをドライブに入れ、病院に向かって走り出した。