犬と猫…ときどき、君
真っ直ぐ目を見据えて答えを待つ私に観念したのか、フーッと溜め息のような長い息を吐き出した城戸春希が、やっとその口を開いた。
「困った事に、実はもの凄いタイプなんだけど」
「は? 何の話?」
けれど、意味が全くわからない。
思わず眉を寄せたの顔を見て“ふはっ”と笑った彼。
いや、笑われる意味も解らないし。
「昨日の話の続き」
「昨日?」
何だっけ……。
“昨日”と言われると、どうしてもあの時の事ばっかり思い出してしまってダメだ。
「お前が聞いたんだろ」
「……私?」
「“好きな女のタイプはー?”とか」
「あー、聞いたような気もするね」
聞いたけど……。
「ん? それで、何の話?」
やっぱりよく意味が解らず、首を傾げた私を見て、彼はまた盛大に溜め息を吐いた。
「だから、お前がもの凄いタイプで、困った事に好きになっちゃったんですけどって話だろ」
呆れたような表情で、何なら棒読み気味に落とされたその言葉。
「昨日、言いそびれた」
そこまで言われて、やっとそれまでの言葉の意味を理解した私は、実はもの凄く鈍いのだろうか。
だけど、どうしようもないくらいドキドキしている私の目の前で、城戸春希がまたよく解らない事を口にしたから――私の眉間のシワが益々深くなる。
「で、それを伝えた上で質問」
「質問?」
「おー。……あいつは何者?」
「“あいつ”って?」
話しの展開が速すぎて頭がすっかりこんがらがっているのに、城戸春希の代名詞トークが、それをますます酷くする。
“あいつ”って、一体誰の事?
心当たりも、後ろめたい事も当然ないのに、心音がドキンドキンと外まで聞こえそうな程に大きくなる。