犬と猫…ときどき、君
「……っ」
春希のそんな苦しみに全く気付けもしなかった私は、本当にバカだ。
――だけど。
「何でそんなに人のことばっかり……っ」
「芹沢……」
「私はそんなこと望んでないのにっ!! どうして……どうして勝手にそんなことするの!?」
「……」
「ホントに……バカだよ、春希……っ」
それに負けないくらい、春希だって大バカだと思った。
知らなかった真実を知って、全ての点が繋がって線になって、そこでやっと、色々な人の言葉に込められた意味に気付く。
“手遅れになる”。
あの夜、沖縄でそう言った仲野君は、全てを知っていて、それであんな言葉を口にした。
それってきっと、今のこの事態を予想していたからなのだと思う。
そうだとしたら……。
今はもう、彼が言う“手遅れ”という状態なのかな。
もう何をしても間に合わない?
やっと春希の苦しみを知ることが出来たのに、私に出来ることは何もない?
たくさんの事をグルグルと考える私に、篠崎君はティッシュを箱ごと差し出しながら、言ったんだ。
「正直、今回ばっかりはハルキのホントの気持ちが分からなかった」
「え?」
「あいつ、ホントに留学なんかしたかったのかなぁって」
そして、黙ってテッシュを受け取った私の顔を見って、クスッと笑って、
「大親友の俺的には、ただ逃げる為の留学なんじゃないかって踏んでるんだけど……。芹沢はどう思う?」
最後にそんな言葉を投げかけた。