犬と猫…ときどき、君
獣医の仕事もだけど、アニテクの仕事は特に、“3Kだ”と言われることもある。
本当に何となくだけど、アニテクの採用面接で初めてあの三人に会った時、思ったんだ。
“この子達も、疲れ果てて、自分の居場所が欲しくて来たのかな”って。
きっと自分がそうだったから、その気持ちを他の人よりも強く感じてしまったのかもしれない。
そう考えると、余計にこの病院はなくしたくないんだけど……。
現実は、そんなに甘くない。
当たり前だけど、もしも雇い続けるのであれば、お給料をちゃんと出せるくらいまでここが稼働しないと、あの子達の生活が破綻してしまう。
感情ばっかりに気を取られて、そんな事になっては本末転倒だ。
あぁ、やっぱり胃が痛い。
歳のせいなのか、体調のせいなのか、最近胃痛がなかなか治まらないし。
キリキリと痛む胃に、無理やり胃薬を流し込んで、倒れては困るからと、たいして食べたくもない食事を押し込む。
毎日ちゃんとカロリーは取っているはずなのに、
「胡桃、やつれてないか?」
たった今、午後の診察の為に来てくれた聡君にまでそんな事を言われちゃうし。
「やつれてないよー」
「そう? でも疲れてそう」
「まぁ、それはちょっとだけ……」
その言葉に、聡君は何故か不機嫌そうに顔を顰めて頬杖をついた。
「胡桃」
「ん?」
「俺に出来る事、ない?」
聡君って、本当にお兄ちゃんみたい。
でもね、松元さんに言われて、ちょっと反省したの。
確かに私、聡君に甘えすぎてるなって……。
もちろんそれを聡君に言う事はないけれど、ちょっとだけ兄離れをしてみようかなって思ってるんだ。
「ありがとう。でも、今回はもうちょっと一人で頑張ってみる」
そうじゃないと、全部を一人で抱え込んでいる春希に申し訳ない。
「……」
――春希。
春希は今頃、どうしているんだろう。
“あと一週間もあんだろ”って、荷造りとかも終わっていなさそう。
その様子を想像したら、ちょっと面白くて、
「なに一人で笑ってんだよー」
「何でもない。さて、じゃー午後の部始めようかな!」
今日もまた、頑張れそうな気がするから不思議だ。