犬と猫…ときどき、君
――それなのに。
「さっき俺が蹴りを入れたのは、誰でしょう?」
「はっ!?」
彼の口をついて出たのは、意味不明なそんな質問――というか、クイズ?
「誰?」
「……篠崎君」
「ピンポーン」
陽気な言葉とは裏腹に、表情は相変わらず不貞腐れたような表情のままで、そのギャップが謎すぎる。
「じゃーさ、」
「ん?」
「……」
「……」
「いや、いいや。何でもない。アホくさ」
「は?」
小さな沈黙の後、一体どんな言葉が続くのかと、固唾を呑みながら待っていた私に落とされた言葉。
“アホくさ”って。
「ねぇ、言いたい事あるなら、ちゃんと言って?」
何だか気の抜けるセリフを吐かれたせいで、私の方まで脱力する。
そんな私を、少しだけ表情を緩めながら今度は困ったように溜め息を吐いて見た城戸春希は、
「じゃー、俺は?」
そんな、よくわからない言葉を口にした。
「――はい?」
「だから、俺は?」
「城戸君」
「……」
「え? 違うの?」
そんなアホな。
“城戸君”は“城戸君”でしょ?
ついつい眉間に皺を寄せて、見据えたその瞳。
けれど、それもフイっと逸らされてしまう。