犬と猫…ときどき、君

「――んっ、ちょっと……待って、シャワー……っ」

「だから、無理だって」

「無理って、春希……ンッ……」


本当はもっと話がしたかったし、さっきの返事のことだって聞きたかった。


――でも。


「春希」

そう言って、俺にギュッと抱きついてきた胡桃に玄関でキスをして、その火照った、トロンとした顔を見てしまったら、もう抑えなんてきかなかった。


そのまま手を引いて、昔と変わらない寝室に連れ込んで、またキスをして。


「ね……っ、だって……なんかヘン……ッ」

久し振りに触れるはずの肌は、やっぱり胡桃の肌。

少しひんやりとして、滑らかで、真っ白で、埋めた首筋や胸元の香りだって、あの頃のまま。


薄れていたけれど、忘れることのなかったその記憶。


それが濃くなることが嬉しいのに……。


「あ……っン」

その声に、チリチリとした雑音が混ざり込む。


「……っ」

ホント、ダメだな……俺。


強く、噛みつくようなキスを落とした俺に、胡桃は少し驚いたように、濡れた瞳を上げる。


――こんなくだらない事、気にするな。

そう思うのに。


「他の男にも、そんな声聞かせたの?」

「え……?」

「他のヤツは、どんなふうに胡桃の体に触れた?」


湧き上がったのは……

くだらない嫉妬心。


あの頃だって、これで胡桃を傷付けたのに、俺は本当に成長しない男だ。


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