犬と猫…ときどき、君
「違う。違う、違う。意味わからん」
しかも、一人で頭を掻きながら、またよくわからない言葉を口にしている。
“意味わからん”は、多分こっちのセリフだと思う。
そんな事を思った私だったけれど――。
「……あ」
気付いてしまったかもしれない。
「“春希”」
「……っ」
名前を呼んだ瞬間、赤くなったその顔。
「……バッカじゃない?」
「自分でもそう思うので、もう何も言わなくてよし」
よっぽど恥ずかしかったのか、自分が情けなくなったのか、“春希”は一人頭を抱え、そこをガシガシと掻きむしった。
「春希」
「……」
――ホントにもう。
「いい名前だよね」
「……どーも」
大人っぽいのかと思ったら、こんな子供みたいな一面をチラチラと見せてくる。
それが私の胸をどれだけキュンとさせているかも知らないで。
「誕生日、何月何日?」
「お前、会話おかしくないか?」
「そう? ねー、何月何日生まれ?」
「……9月8日」
「……」
「何だよ」
「私、9月10日!」
「マジか!?」
「うんうん! マジで!」