犬と猫…ときどき、君
「ごめん……。別れたい」
その目を真っ直ぐ見据えたまま、小さく、でもハッキリとそう口にした私に向けられたのは、当然の事ながら、驚いて見開かれたあなたの瞳。
「ごめんなさい」
もう一度そう口にした私に、あなたはハッとしたように口を開いたんだ。
「ワケわかんないんだけど」
「うん……」
「理由は?」
「……」
「昨日まで、普通だったじゃん」
「ごめんなさい」
繰り返される私の謝罪に、頭上から少し苛立ったような溜め息が落とされる。
「別れたいと思うなら、ちゃんと理由を話すのが筋だろ?」
「うん」
あなたのその言葉に、私は一度、大きく息を吸い込んで、吐き出した。
「上手くバランスが取れなくなっちゃったの」
「……バランス?」
きっと言っても、解ってもらえない。
そう思いながらも、私は精一杯自分の気持ちを表現しようと試みる。
「同じ“好き”を返せないの。あなたが私を想ってくれるのと同じだけ、あなたを想いたいのに」
「……」
「それが出来なくなっちゃったの……」
目の前で、悲しそうに表情を歪ませるあなたに、私はもう一度頭を下げた。
「本当に、ごめんなさい」
「それは、俺の気持ちが重いって事?」
その言葉に、私は顔を上げ、必死に頭を横に振る。
「違う!! そうじゃ……ないの」
「じゃーどういう事?」
そう聞かれて言葉に詰まってしまうのは、それがどうしてなのかが私にも解らないから。