犬と猫…ときどき、君
人を小ばかにしたような春希のその一言に、頬を膨らませた瞬間、
「お前ら、ホント不思議だよなぁ」
「なー。意外すぎる」
「確かにー」
周りの仲間達から口々に浴びせられる、よくわからない言葉達。
「何で?」
「だって、単体だと基本的に物静かというか……大人っぽいのに、二人揃うとやかまし過ぎる」
そんな事を言いながら、笑ったのは篠崎君だった。
自分ではそんなつもりはなかったのだけれど一様に頷く周りのみんなの反応を見ると、それはきっと事実なのだろう。
「胡桃がガキだからな」
「……」
「ガキはお前だろ、ハルキ」
ここで言い返しては負けだと押し黙った私の代わりに、篠崎くんは更に素敵な言葉を続けてくれる。
ですよね。
そうですよねー。
――それなのに、
「いやー、胡桃もなかなかのガキっぷりでしょー」
マコの一言ですっかり台無しだ。
「私達の事はもういいよ……」
何だか一方的に巻き込まれた感がある私はすっかり疲れてしまって、項垂れながら溜め息を漏らした。
「だな。もうお前の豪腕の話はいいな」
「……」
“くくくっ”と楽しそうに笑う春希をジロリと睨みつけたその時、まるでそれを止めるように、バットを放り投げた篠崎君が私達の間にズバーッと割り込んできた。
「それより、合宿の事決めちゃおうぜー!」
「え? 合宿?」
「あれ? 芹沢、ハルキから聞いてないの?」
「何を?」
「この愛好会の正体」
――“正体”、とは?
「あー、まだ話してねぇよ」
「……何? 何の話し?」
会話の意味がよくわらかなくて首を傾げた私に、篠崎君は可愛らしい笑顔を向ける。
「“ソフトボール愛好会”は、仮の姿だから!」
「……は?」
その爽やかな笑顔の意味も言葉の意味もわからない私に、春希が笑いながら足りない言葉を補足したのだ。