犬と猫…ときどき、君
「大丈夫か?」
「――ごめん。ありがと」
呆れたように私を見下ろしながらも、少し口元を緩める春希。
その手から、自販機で買って来てくれた冷たいミネラルウォーターのペットボトルを受け取る。
「はぁ……。気持ちいい」
よく冷えたペットボトルを火照った頬に当てながら、私はベッドにポテッと倒れ込んだ。
よく考えたら、今日だってここに着いてから、公園で大はしゃぎして大鬼ごっこ大会とかしたりして。
何気に、すごく疲れていたんだと思う。
そこであんなにお酒を呑んだから……。
「ん~……」
もうホント、何をしているんだろう。
誰に対してかもわからない言い訳を頭の中でくり返しながら、目を閉じて、深く呼吸をする。
すると、ベッドが軋む音がして、横を向いて倒れ込む私の目の前に、ゆっくりと腰を下ろす春希の気配がした。
ただそれだけの事なのに、心臓がドキリと跳ね上がって、閉じていた目を開いた。
瞳に映ったのは、今日は冷たく感じる、春希の長くて綺麗な指先。
それがそっと、私の額に触れた。
「……っ」
「顔、真っ赤」
多分、春希が言ってるのは、お酒のせいで赤くなった顔の事。
――でも、違う。
私は、そのせいだけじゃない事を知っているから。
だから思わず、その優しい視線から瞳を逸らしてしまう。
「……どうした?」
「ねぇ、春希?」
ダメだ……。
私、何かおかしいかも。
正常な思考とは裏腹に、私の口をついて出たのは――
「私のこと……好き?」
いつもよりも少し湿った呼吸と、そんな言葉だった。
私をじっと見つめる黒い瞳に、胸が掴まれたようにギュッとなる。
「どうした?」
少し困惑ように笑った春希の、私の頬に滑り落ちたその手に自分の手を重ね、
「ねぇ、好き?」
くり返したその言葉が、二人きりのバンガローに静かに響いた。