犬と猫…ときどき、君
反省することが多いすぎて、眠る事なんて出来ないと思っていたのに、意外と神経が図太かったらしい私は、知らぬ間に眠りに落ちていた。
「……寒い」
どれくらい眠っていたのだろう。
お酒の力も手伝って、ベッドに倒れ込んだまま、毛布もかけずに眠り込んでいたらしく、小さく震えながら目を覚ました。
「……」
まだ少しボーっとする頭で周りを見回せば、そこは見慣れないバンガローの中。
さっきの、夢って事にしてくれないかなぁ。
“まさかの夢落ち!”みたいな。
再び自分の失態を思い出して、頭をブンブンと振る。
「そんなに都合よくいかないか」
吐き気はなくなったものの、鈍い痛みが頭に走って、あれが現実だったんだという事を、まざまざと見せつけられている気分になった。
だけど、それと同時に思い出したのは、春希とのキス。
ほんの一瞬だったけど……。
てゆーか私、何をこんなに動揺してるの?
ファーストキスでもあるまいし。
自分に言い聞かせるように、心の中でそんな言葉を呟いてみるけれど、
「……」
明らかに赤くなっているだろう自分の頬に、手を添える。
「はぁー……。頭モヤモヤする」
酔っぱらっている時は感じなかった、自分のお酒臭さ。
それにゲンナリしながら、私はゆっくりベッドから立ち上がり、バスルームに向かった。
もー……。
本当にごめんなさい。
絶対に春希も、お酒臭いと思ったはず。
でも向こうも呑んでいたし、平気かな?
「ん~……」
スッキリしたくて浴びたはずのシャワーなのに、熱いお湯を頭からかぶりながら考えるのは、やっぱりさっきの春希との事だった。
まつ毛、長かった。
……ズルイなぁ。
「……」
いやいや、違う。
そうじゃないでしょ。
「もー、ワケわかんない」
小さく呟いた声が、反響しながら湯気が立ち込める空間に広がる。
明日の朝、春希に会ったら、どんな顔をしよう。
真正面にある曇った鏡に映るのは、嫌になるくらい情けない顔をした自分の姿。