犬と猫…ときどき、君
「別にいいじゃん! そもそも春希が悪いんじゃん! 四ヶ月も手、出さないからさ……」
バスルームを出て体を拭きながら吐いた、明らかに逆ギレのその言葉。
逆ギレだって自分でもわかってるから、尻すぼみになってしまうのは仕方がない。
「はぁー……」
最終的にまた大きな溜め息を吐いた私は、髪の毛を拭きながら再びベッドに向かってテクテク歩く。
「俺のせいかよ」
「え?」
一人きりだと思っていたバンガロー。
そこに響いた声に、私は弾かれたように顔を上げた。
「はる……き?」
「はぁい?」
「何で……いるの?」
目の前でベッドに寝転がりながら、楽しそうな視線を私に送っていたのは、他ならぬ春希その人で。
「リバースして窒息してねぇかなーとか心配して、来てみたんですぅ」
「……」
まさか、聞かれて――
「ごめんね。四ヶ月も手ぇ出さなくて」
「……っ」
いないはずもなく。
「胡桃、そーいう事態を楽しみに待ってくれてたんだ」
艶やかな笑顔を浮かべながら、ゆっくりと立ちあがった春希が私の目の前まで歩み寄る。
「じゃー、お言葉に甘えちゃおうかな」
「いや、あのね!! 違くてっ!!」
恥ずかしいやら、恐ろしいやらで一人ワタワタと慌てる私に、スッと伸ばされた春希の手。
「……っ」
何をされるのかと、目をギュッとつぶって身構えた私だったけれど。
「……え?」
「びびってやんの。ばぁか」
目の前で子供みたいに笑いながら、これまた子供みたいなセリフを吐いた春希の手が行き着いたのは……私の右手。
「行こうぜーい」
「はっ!? えっ!?」
そして、まだ髪の毛も乾いていない私の手をグッと引いて、バンガローの外に連れ出したんだ。