犬と猫…ときどき、君

春希に連れられてバンガローを出て、テクテクと歩くこと十数分。


「きゃぁぁーーー!!」

目の前に広がるその光景に、私は両手を広げながら感嘆の声を上げた。


「あははっ!! 声でけぇしっ!!」

「だってだって、何これー!!」

座り込んだまま、両腕を空に向かって真っ直ぐ伸ばした私のその手の先には、信じられないくらいに綺麗な星空が広がる。


「これだけ星があると、北極星も北斗七星も、どれだかわかんないねー!!」

「確かになぁ。すっげぇなー」

「降ってこい、降ってこーい!」


手を伸ばしたまま、そんな言葉を口にした私を見て“ガキかっ!! アルマゲドンかっ!!”なんて、突っ込みを入れた春希だけど……

「マジすげぇー」

と、もう一度呟きながら空を見上げる自分の顔だって、十分子供みたい。


「自分だって、子供みたいな顔してるし」

「いつもとのギャップに、胸が“キュンッ!”ってなるだろ?」

「バッカじゃない」

クスクスと笑った私を見て、春希は目を細めると、さっきよりも少しだけ大人びた表情で笑う。


「一緒に来られて良かった」

そんな表情のまま、春希は優しい声でそう口にした。


ずるい。

ずるいけど――。


「……」

「ん?」

「“キュンッ!”」

「あはははっ!! 口で言うなよっ!!」

笑いながら人の頭をゴチャゴチャに撫でまわす春希の指先は、やっぱり温かい。


「どした?」

「ううん。指、温かい」

「酔いが覚めたからだろ」

目を細めて口元を緩めたまま、今度は私の頭をゆっくりと撫でる。

さっきとは比べ物にならないくらい、優しく、優しく。


その表情と手に、やっぱり胸がキュンとなって……。


「さっき、ごめん」

「……え?」

どうしても、さっきのことを謝らないといけないと思った。


「あんな、勢いに任せてみたいなの……嫌に決まってるよ」

私の言葉が、よっぽど思いがけないものだったのか、その目を大きく見開いている春希に、私はもう一度頭を下げた。


「だから、ごめんなさい」

「……」

けれど、春希は何も言ってくれない。


――なんで何も言わないの?

続く沈黙に、ゆっくりと、恐る恐る視線を上げた。


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