犬と猫…ときどき、君
「春……希?」
「何でこういう時に、そういう事を思い出させるかな」
「え?」
溜め息交じりに、私に落とされた春希の言葉。
困ったようなその表情に、またやってしまったのかとションボリ肩を落とした次の瞬間――……
私は腕を掴まれ、引き寄せられて、開きかけた口を春希の唇で塞がれていた。
「ん……っ」
さっきとは全然違う、深くて乱暴で――だけど、信じられないほど甘いそのキスに、胸がしめつけられて苦しくなる。
何度も何度も、角度を変えて繰り返されるそのキスは、私の思考をどんどん奪っていって……。
頭の中とか、唇とか、指先とか。
とにかく、色んな所が痺れるような、そんなキス。
「はぁ……っ」
一瞬離れた隙間から、辛うじて息を吸った私の唇は、次の瞬間にはまた春希のそれに塞がれて……。
その柔らかくて熱い舌が、私の口内をどんどん侵していく。
「――ん~~っ!!」
さっきまで私の後頭部を押さえ付けていた春希の手が、優しく私の背中を撫でながら、ゆっくりゆっくりと、下にさがっていき、
「……っ!!」
シャツの裾から侵入した温かい手が、私の素肌に触れた。
何……これ。
こんなの、知らない。
私の背中を、背骨に沿うようにスッと撫で上げる春希の指先。
まるで電流が走るみたいなその感覚に、私は思わず息を呑み、身をよじる。
触れた瞬間、ピリリとした刺激を残した後は、まるで私の肌と同化するようにピタリと吸いつく。
「あ……ッ」
ゆっくりと草の上に押し倒されると、大きな戸惑いと、得体の知れない感覚が湧き上がって、自分でも驚くほどに息が上がる。
「……っ」
私の口から漏れ出た小さな吐息に、春希の喉元が上下して、コクリと息を呑むのがわかった。
それと同時に、春希は首筋に唇を移し、ゆっくりと、何かを確かめるようにそこにそれを這わせる。