面倒くさい恋愛劇場
●追い込まれた彼女の暴走の巻
 『別れてくれないなら、彼を一生あたしのものにする』

 (別れるもなにも、知り合いですらないんですけど)
 狂気じみた手紙に突っ込んでみたところでどうにもならないのは分かっている。
 けれど、この手紙がなんだか非常にまずいようなものであることは、薄々感じられた。

 (どうしよう。わたし、忠告すら出来ないんですけど)

 そう思って、ふと思い出したのはジムに行ってるという彼の言葉だった。

 (! そうだ、ジムに行けば会えるかも!)

 思い立ったら吉日。
 彼女が行動を起こすのがいつかわからない以上、少しでも現れる確率の高い場所で彼を待っていた方がいい。
 どうせ会おうがどうしようが、ストーカーの彼女は勘違いをしたままなのだ。わたしが会わないようにしていたところで、状況は変わらない。むしろ、別れ話でもしているように見せかけた方が得策なのじゃないかとも考える。
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