面倒くさい恋愛劇場
 うわごとのように繰り返す彼女が、なんだかいたたまれなくなってくる。
 (本気で好きなだけなんだよね。100歩譲って、好意的に考えて)
 
 一瞬、彼女に意識を向けていると、掴んでいた腕を振りほどかれる。
 それにハッと顔を上げると、彼はわたしを安心させるというよりも、自分を落ち着かせるように、わたしの肩をぽんぽんと叩いた。
 とりあえず、落ち着こうという気持ちはあるらしい。
 (……まぁ、険呑な雰囲気は薄まってるから、大丈夫かな)
 暴走したら、相手を陥落させるまで罵りそうな勢いは治まったようなので、ちょっと離れて様子を伺う。

 彼女も、彼が自分の方を向いたことで、足を止める。

 「悪いけど、俺はあんたのこと好きじゃない」

 (ええー? いきなりそこ? そこいっちゃう??)
 あまりにも直球ストレートな口切に、おろおろと彼女を見ると、彼女は悲しそうに顔を歪ませた。

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