面倒くさい恋愛劇場
 「ご迷惑をおかけしました」
 「いえいえ。……良かったですね、と言っていいんでしょうか?」
 「たぶん、大丈夫です。途中から、話を聞いてくれそうに見えたので。最初は、思わず怒鳴りそうになったけど、顔が見えて雰囲気が分かれば、勢いで突っ走ってるのか、話が通じない人間なのかくらいは分かります」

 急に、敬語で話しかけられると、戸惑う。
 彼の中でも、どう対応したらいいのか迷う立場にいるのだろう。
 距離が出来る分、余裕は作れるけれど、勢いがなくなるせいか、どのタイミングで話を切ろうかお互いに探ってる感があって、なんだか心地悪い。

 「じゃ、わたし帰るので」
 ……ここは、大人なわたしが切り出すのが道理だろうと口を開くと、彼はホッとしたように再度頭を下げた。
 「本当に、ありがとうございました」
 それに軽く会釈をして、帰る方向へと足を進める。

 ああ、これで話することもなくなるんだ、と思う。
 (女子高校生との話し合い、上手く行くといいなぁ)
 一瞬、去っていった高校生の顔を思い出す。
 最近の子は、可愛い子が多いと思っていたけれど、例外なく、さっきの子も可愛かった。
 肌もちもち、髪つやつや。何より、若い。
 ……羨ましく思った自分が、ちょっと切なくなったものの、今度こそ、接点はなくなるのだと思っていたのに。

< 19 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop