面倒くさい恋愛劇場
 「先週末、2つ先の駅前付近のカフェで見かけましたよ」
 「?!」
 「一昨日は、2つ先の駅前付近の映画館で見かけました。ちょうど上映後にあなたが入ってくるところだったので、声かけられなかったんですが」
 「あ、あの?」
 「この前は、2つ先の駅前付近で信号待ちしながら空を見上げてるのを反対側の歩道から見てました。視線があまりにもおかしな方向を向いているから、どうしたのかと思ったら、虹が出ていて」
 「…………」
 「行動範囲、本当に似てるんですよね。避けられてるのかなと思って、じゃ、俺も万が一にも会わないように行動範囲を変えようと思ったら、変えた行動範囲が被っていたみたいで、頻繁に見かけるんですよ。あなたのこと」
 
 いないものだと思って、探しもしなかった。
 むしろ、似たような人がいても、気のせいだと思うようにしていた。
 (だって、恋愛は面倒くさい。見てるだけでよかったのに)
 よほど、困った顔をしていたのかもしれない。自信の塊のような彼が、眉を下げて、それでも追い詰めるようにわたしをじっと見つめたまま言葉を続ける。

 「もう、俺は、あなたの『虹』のような存在ではなくなった?」

< 21 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop