面倒くさい恋愛劇場
 「そ、それ! わたしじゃないです!!」
 「はぁ?! 白を切る気か?!」
 「わたし、ここ数ヶ月関東から出てません!」
 「じゃぁ、広島で俺が見かけたお前はなんだよ!」
 「妹です!」

 (たぶん。っていうか、絶対)

 わたしたち姉妹は、よく見れば別人だとわかっても、遠目からだったり、一瞬すれ違うだけだったりすると、知り合いでも間違うくらい背格好や雰囲気が似ているらしい。その妹は、先日広島旅行から帰ってきたばかりで、宮島で買ったしゃもじがお土産として送られて来ていた。それも、かなり満喫してきたらしく、厳島神社最高! という写真付きで。
 
 「妹?! ……よく、そんな嘘がつけるな!」
 でも、そんなこと知らない相手からしてみたら、納得がいかなくて当然だろう。
 ヒートアップし始めた彼につられて、わたしの声も大きくなる。
 「嘘じゃないです! わ、わたしだって、行動範囲が被ってるなとは思ってたけど、あなたのことを調べるなんて面倒くさいこと、しません!」
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