彼氏の余命を知ってる彼女。


ヒカルは大丈夫と言うが、電話からはシャープペンの進む音が聞こえてくる。


きっと、勉強中だったのだろう。


「…ううん。ただ声が聞きたかっただけ…。勉強中だったんだよね?邪魔してごめんね。じゃあ…」


『待って』


じゃあね、と電話を切ろうとした時、電話の向こうで力強い声が響いた。


歩いていた足がピタリとその場で止まる。


「ん?」


『…ヒナ。俺はずっとヒナと一緒に居るから。精一杯人生を歩んで。

──じゃあまた明日な』


プツッと音と共に通話が切れた。


    
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