彼氏の余命を知ってる彼女。
────四月。
一面に広がる雪景色を見る度、まだ春が訪れてないことを実感する。
白い息を吐き、鼻の先を赤く染めて長く続く一本道を歩く。
「う~、寒い~」
紺色のPコートを羽織り、毛糸のマフラーで鼻と口を隠しながら嘆く。
──安藤 ヒナ。 私の名前。
サク、サク、と雪を踏み締める音が耳に入る度、寒気がする。
季節の中で冬が一番キライ。特にこの、世間一般では春と言われてるが、地元ではまだ冬の名残りが残るこの季節が。