≡ヴァニティケース≡
このように人は敵対する者を過剰に醜く捉えがちになるもので、従って蒔田の目にも美鈴の姿は醜く写っているに違いない、と彼女は確信していた。
バスルームを出た美鈴は、ベッドに座りもうひとつふたつ思案を巡らせた。
蒔田から受けた印象は、始めから不快の色が濃かったように思い出される。美鈴から自分の土壌を脅かされる格好になった彼は、恐らく憎しみに近い程の感情を持っていたのではないか。そんな彼が美鈴排除の方向で動き始めたとき、今日のような直接行動に出たとしても何ら不思議ではない。それだけの逆恨みはしているだろうと思われた。
だが、最終的に行動を起こしたということは結果、究明される原因を自ら作り出すことに他ならない。
美鈴は彼の愚かさに苦笑してしまうと同時に、不思議と興奮が込み上げてくるのを感じていた。