≡ヴァニティケース≡
美鈴の意識はやっと現代に舞い戻ってきた。
─────私は今から答えを出す。誰もが受け入れる弁明を考えてから、この無間地獄を抜け出す。そして止まった時に歩みを乗せるんだ─────
混沌とした記憶は、果たして出口のない迷路ではない。単に生と死のサイクル。歩みを加速させれば、そこには屍となった過去が累累と横たわっているだけ。
女はあやかし、あやかしが女。
─────思い、出し……た……─────
眠りに落ちる瞬間に脳裏を過ったのは、誰あろう美鈴自身の顔だった。
~二つの顔~