≡ヴァニティケース≡

 美鈴の意識はやっと現代に舞い戻ってきた。


─────私は今から答えを出す。誰もが受け入れる弁明を考えてから、この無間地獄を抜け出す。そして止まった時に歩みを乗せるんだ─────


 混沌とした記憶は、果たして出口のない迷路ではない。単に生と死のサイクル。歩みを加速させれば、そこには屍となった過去が累累と横たわっているだけ。


 女はあやかし、あやかしが女。


─────思い、出し……た……─────


 眠りに落ちる瞬間に脳裏を過ったのは、誰あろう美鈴自身の顔だった。


~二つの顔~


< 263 / 335 >

この作品をシェア

pagetop