≡ヴァニティケース≡


─────心臓? 私が心臓に、なる?─────


「意味が解らない! 貴女はいったい何がしたいの?」


「何がって、そない……」


 女が言い掛けたとき、それを遮るようにして聞こえてきたのは、美鈴もよく知っている声だった。


「悪いねえ、美鈴くん。このお嬢さんと君とは同じDNAで出来ている。君が調べ上げた通り、写真の人である鈴奈さんは君の母親……いや、原細胞の提供者なんだ。ほら、だから美鈴くんの臓器をお嬢さんに移植しても拒否反応は全く出ない。まぁ自家移植と一緒だからね。このお嬢さんの為に、君にはほら、死んで貰うよ」


「……な……なん、で?」


「解らないのかい? この意味が」



< 311 / 335 >

この作品をシェア

pagetop