≡ヴァニティケース≡
「それで結婚しろって脅迫したの?」
「当然だ。私には腐った医療社会に復讐する義務がある。いや、腐った格差社会と言ってもいい。それには鈴奈さんの資産を自由に使える立場になりたかった。では、一番手っ取り早い方法とはなんだ? 私が彼女と結婚することだろう」
「財産目当てだなんて、余計に酷いわ!」
「そ·れ·は·男だけの話かね? 打算で結婚する女だって、この世にはゴマンと居るだろう。居ないとは言わせないぞ!」
「でも……」
「そうとも、打算が有って何が悪いっ! 世の中は金。金、金こそが全てだ」
「お金が全てじゃないわっ」
「黙れ! 命と愛は金で買えないだなんて、そんな話は出来の悪いコメディーだ。いいか。俺は後ろ盾が無いばかりに地方を転々とさせられた。その間に画期的な研究を同僚に奪われたんだぞ。奴は俺のデータを基にした論文が評価され、今では医学界の権威だ。後輩もだ。あいつは俺の女を奪った。それもこれも何が原因だったと思うんだ?!」