≡ヴァニティケース≡
自分が作り物だと知らされたミレイは、自己の同一性を守る為にミスズを排除しようと考えた。と、そういうことだったのだ。
「結果は予想通りだったよ。ミレイお嬢さんは自らの鏡である筈のミスズ君を激しく憎んだ。全く予想通りだった。ねえ、ミレイお嬢さん」
「せやな。まあ、どのみちうちはひとりで結構ですし」
「でも、だったらどうして私を……」
「ああ、ボディーガードのことかい? なんで急に寝返ったのかって聞きたいんだろう? うむ。それはだな。君を守るようこいつらに依頼していた鈴奈さんが、先日の事件で相当なショックを受けてしまってね。精神的に参ってしまった。だから私は、彼女を気が触れたことにして閉鎖病棟に入れたんだ。あそこの中に閉じ込めればほら、もう邪魔者を雇うこともできないからね。なあ、それで合ってるかい? 塚田君」
「……はい」