≡ヴァニティケース≡

 更に面接後に訪れた不動産屋では、偶然にも内装オールリフォーム済みの格安物件が空いていた。つまりなんの苦もなく京都でのスタートを切ることが出来る、そんな条件が揃っていたのだ。仮に明日採用の通知が来ても先行きに全く不安はない。事実、美鈴の元に採用通知が来たのは、それから2日後の朝だった


「良かった。でも決まった以上は、のんびりなんかしてられない!」


 新しいアパートの賃貸契約、住所変更の届け出、引っ越しの荷造りや挨拶回りと、1週間は目が回る程の忙しさだった。


 やがて多忙な日々を終えた東京での最終日の朝。美鈴は隆二と出会った郊外のあの駅に降り立っていた。



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