≡ヴァニティケース≡

 つまり、美鈴そっくりの女が過去の京都に実在していたということになる。それこそが不可解で、なおかつ不気味であった。


────何かが引っ掛かる────


 そう思わずにはいられなかった。彼女はどうしても写真の謎を解かなければいけない気がしていた。だから休日を利用して、石田に神社までの案内を頼み込んだのだ。


 たまたま都合がついたのだろう、彼が快諾してくれたことに美鈴は感謝していた。


 石田医師によると、目的地は駅から歩いて5分ほどの場所らしい。


「はい。実は……私の部屋からこんなものが出てきたんです」


 神社の階段を登りながら、美鈴は日記代わりに使っているスケジュール帳から写真を取り出し、それを石田に見せた。



< 51 / 335 >

この作品をシェア

pagetop